ポーランド大統領府は2日、スイスフランを中心とする外貨建て融資契約に関連する法案を発表し、銀行への自己資本要件を厳しくすることで間接的に国内通貨ズロチ建てへの移行を図る方針を明らかにした。当初は換算の強制化を狙っていたが、銀行業界が危機に陥るリスクがあると判断。外貨建て契約のコストを増やすことで徐々に換算を誘導する手法をとることにしたもようだ。
ドゥダ大統領(法と正義:PiS)は昨年の選挙で外貨建て融資契約をズロチ建てに転換することを公約して当選した。しかし、ポーランド金融監督庁(KNF)は、「強制的措置をとれば金融業界は一度に150億ユーロ相当の負担を強いられ、金融システムが揺らぐ危険がある」と警告。大統領府では外貨建て融資に対する自己資本要件を大幅に引き上げることで銀行の負担を増やし、ズロチへの換算をうながす方向に軌道修正した。1年以内にフラン建て融資の「数十パーセント(グラピンスキ中銀総裁)」がズロチ建てになると見込んでいる。
大統領府はこのほか、外貨建て融資の契約手数料を契約時にさかのぼって引き下げる法案も準備中だ。成立すれば銀行業界は合計で36億~40億ズロチ(8億2,700万~9億1,900万ユーロ)を債務者に返金しなければならなくなる。
ポーランドでは金融危機前に金利の安い外貨建てで住宅ローンを組む人が相次いだ。特に2007、08両年にはフラン建て契約の締結数が50万件に上った。しかし、その後、フランに対するズロチの為替相場が半分に下落したことで国民の債務負担が激増。外貨建てローンは社会的問題となっている。
今年始めの時点でポーランドの銀行の外貨建て貸出残高は1,440億ズロチ(330億ユーロ)に上った。(1PLN=26.21JPY)