仏自動車大手ルノーが排ガス試験の際に窒素酸化物(NOx)排出量を不正に操作した疑いがあり、仏政府はこうした事実を把握しながら公表しなかったと報じられた問題で、仏環境・エネルギー・海洋省は24日、報道内容を否定する声明を発表した。仏国内で販売されている全車種について検査結果を公表しており、検査中に検出された異常値については競争・消費・不正抑止総局(DGCCRF)がすでに調査を開始したと説明している。
仏当局は昨年9月に独フォルクスワーゲン(VW)の排ガス規制逃れが発覚したことを受け、内外のメーカーを調査。7月末に対象となった86車種の調査結果を公表した。報告書はルノーの複数モデルでNOxがEUの基準値を9~11倍上回っていたことを明らかにしたが、不正操作の疑惑には触れなかった。
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は22日、調査委員会を構成する17人のうち3人の話として、ルノーの多目的スポーツ車(SUV)「キャプチャー」ではNOx排出量を実際より少なく見せるため、試験時に浄化装置の機能が通常走行時の5倍になるよう設定されていた可能性があると指摘。ルノーの株式20%を保有する筆頭株主の仏政府は事実関係を把握しながら、報告書ではテスト時と走行時の排出量が大きく異なる点に言及しなかったと報じた。
ルノー、環境省ともFT紙の報道を即座に否定したが、ある政府高官は同紙の取材に対し、「仏政府は自ら出資するルノーのブランドイメージに敏感になっている。政府はルノーを正しい方向に導くポジティブなアプローチを重要視している」と発言。ルノーのイメージ悪化を避けるため、同社にとって不都合な情報を隠ぺいした可能性を示唆した。
一方、環境省は声明で、「排ガス試験の報告書をめぐるFT紙の報道を正式に否定する。フランスはVWの不正発覚を受けて独立した調査委員会を立ち上げ、国内で販売されているすべてのブランドを対象に調査を実施した唯一の国だ」と強調している。