人災に悩むモスクワ市民~ロシア

モスクワ市が「人災」に襲われている。2011年にソビャーニン市長の肝いりで始まった大規模歩道改修計画「マイストリート」のおかげで、市民が騒音とほこりに悩まされることになったのである。夜中のショベルカーや切断機の音で眠りを奪われ、夜が明ければ眠い目をこすりながら工事現場に渡された板を通って職場や学校に足を運ぶ。

しかし災難はこれだけでは終わらなかった。7月と8月の激しい雷雨で、道は川や湖と化した。赤の広場に面するマネージュ広場はくるぶしにとどくほど水がたまり、地下鉄駅のいくつかは「水害」のせいで一時閉鎖を余儀なくされた。

その理由は「舗装のし過ぎ」にあるらしい。排水の通り道がないままに、地面を舗装でふさいでしまったのだ。いくつかのマンホールは工事中に蓋の上からアスファルト舗装されてしまった。傾斜規定が守られなかったところではうまく水が流れず、巨大な水たまりが発生した。

そもそも、ソビャーニン市長の計画は見栄え優先で、下水道には今年、道路整備の11分の1の20億ルーブルの予算しか振り向けられていない。専門家によれば、モスクワ市は下水道の近代化が10年遅れている。

市長は強い抗議を受けて、2年以内の問題解決を約束した。まずは半年かけて計画を策定するという。ということは、来年3月までは状況改善は見込めない。

これを聞いた市民には昨冬の悪夢がよみがえった。新しい舗装材は雪が降ると超スピードで凍結してしまうのだ。スケートリンクのようにつるつるで、病院は転んでけがした人でいっぱいだった。苦難は続きそうだ。

「マイストリート」計画の規模は総額1,260億ルーブル(17億ユーロ)で、2011~18年に市内4,000本の道路を刷新する内容だ。住民の評価では「ちっとも悪くなっていない道路」がたくさん含まれている。

このため、「工事を請け負っている企業の社長はソビャーニン市長の妻だ」といううわさが絶えない。前任のルシコフ氏は実際、妻の経営する建設会社に市の工事を発注して富を築いたが、ソビャーニン市長の場合はどうなのだろう。本人は「私の妻に経営者になれというのは、私にバレエを踊れというようなものだ(=到底できない)」と反論しているが。(1RUB=1.58JPY)

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