フランスの金融監督機関である金融市場庁(AMF)と金融健全性監督破綻処理機構(ACPR)は9月28日、英国の金融会社が仏で事業を行う場合に必要となる手続きを簡素化すると発表した。英国のEU離脱を受けて拠点を域内の他の加盟国に移すことを検討している企業を誘致する狙いがある。
AMFとACPRの共同声明によると、手続きで必要となる書類について、当該企業が英国での認可に際して利用した英語の書類も受け付ける。また、仏当局は英語が堪能な職員が認可申請の担当者となり、手続きのアドバイスなどを行う。これによって対象企業は新たに書類を用意する必要がなくなるほか、英語で手続きを進めることができるようになる。
認可の手続きも迅速化し、最初の審査を2週間以内に完了させる。さらにACPRは、仏への移転を検討する英国企業の問い合わせに電子メールで対応する特別窓口を設ける。
EUでは企業が域内のある国で認可されれば、全域で事業を展開できる「パスポート制度」が導入されている。英政府はEUとの離脱交渉で、EU単一市場にアクセスできる権利を維持したい考えだが、EU側は難色を示しており、英企業はパスポート制の恩恵を受けることができなくなる可能性がある。英当局は先ごろ、同国に拠点を置く金融5,500社が同権利を失うという試算を示した。
仏金融当局は、EU離脱後も域内で自由に事業を展開するため、国外に移転する英企業を取り込むため、今回の規制緩和を決めた。EU内ではドイツ、アイルランドが先行して英金融会社の誘致に動いており、これにフランスは対抗する形となる。
