カナダとの包括貿易協定に暗雲、ベルギー地域議会が批准拒否

EUとカナダの包括的経済貿易協定(CETA)をめぐり、ベルギー南部ワロン地域(フランス語圏)の議会は14日、同国による協定批准を拒否する動議を可決した。EUとカナダは今月27日に開く首脳会議での署名を目指しており、EUは18日の通商担当相による臨時会合で正式承認したい考えだが、ベルギーでは7つの地域議会が協定に署名する権限を連邦政府に付与する必要があるため、予定通りに加盟国による全会一致の承認が得られるかは不透明な情勢だ。

ワロン地域議会は賛成46、反対14(棄権1)で批准拒否の動議を可決した。ベルギー政府はCETA支持を表明しているが、ワロン地域では国政の野党・社会党などが議会の多数派を占めており、意見対立が続いている。マニェット地域政府首相は緊急議会で、「ワロン地域は連邦政府に権限を付与しない。従ってベルギーはCETAの署名を承認しない」と明言。そのうえで「CETAを葬り去ることが目的ではなく、これは交渉見直しの要求だ」と述べた。

一方、ドイツの憲法裁判所は13日、CETAに反対する活動家らが提出していた協定承認の差し止めを求める請願を退けた。これにより、独政府は18日の通商担当相会合で協定を承認することが可能になったが、裁判所はCETAに反対する多くの国民の懸念を考慮して、加盟国と欧州議会の承認を経て暫定的に協定が発効した後(全加盟国の議会が批准を承認して正式に協定が発効する前の段階)でも、ドイツが協定から離脱できるようにするなどの条件を付けた。

EUとカナダは2009年にCETA交渉を開始。14年に協定案の内容で基本合意したが、EU内では投資をめぐる企業と国家の間の紛争を処理する「投資家対国家の紛争解決(ISDS)」条項が導入された場合、EU独自のルールや基準が無効と判断されるとの懸念が広がった。しかし、今年2月にISDSの代替案として欧州委員会が提案した二審制の投資裁判制度の導入で双方が合意。年内の署名、17年発効が現実味を帯びていたが、米国と交渉中の環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)について、オバマ米大統領の任期が切れる来年1月までの妥結が絶望視されるなか、EU側ではTTIPの「ひな形」と位置づけられるCETAが、EUにとって不利な米国との協定を推し進めるためのテストケースになるといった警戒感が高まり、協定に反対する動きが広がっている。

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