ロシアのプーチン大統領は10日、訪問先のトルコで同国のエルドアン大統領と会談し、凍結状態にある天然ガスパイプライン「トルコ・ストリーム」敷設計画の再開で合意した。さらに懸案となっていた供給価格について合意したほか、ロシアによるトルコの農産物の輸入禁止措置の段階的解除も決まり、悪化していた両国関係の正常化が進んでいることが鮮明となった。
「トルコ・ストリーム」は2本のパイプラインからなる。1本目は来年に着工し、2019年に開通する見通し。当初はトルコに天然ガスを輸送し、その後に欧州市場向けの供給も開始する。2本目は欧州市場向けガスの供給量を確保するもので、トルコをエネルギー輸送の拠点にするというエルドアン大統領の目標達成に大きく近づく。
両国はこのほか、経済、政治、防衛、観光、文化の分野における交渉を続けていくことで合意した。
ロシアはウクライナを迂回する天然ガス輸送路として「サウス・ストリーム」の建設を計画していたが、EUの理解が得られず、2014年12月に中止を発表。その直後に代替プランとして、黒海を経由してトルコに至る「トルコ・ストリーム」計画を発表した。
しかし、昨年11月のトルコによるロシア軍機撃墜事件を機に両国間の関係が悪化し、ロシアは同計画を凍結した。また、トルコからの農産物禁輸、トルコへのチャーター便運航禁止、トルコ旅行中止勧告といった制裁措置を実施した。
両国は、エルドアン大統領が6月末にロシアに撃墜事件を謝罪したのを機に関係正常化に乗り出した。8月、9月に両国大統領が会談し、ロシアはトルコへの制裁措置を段階的に解除してきた。今回、大型プロジェクトの「トルコ・ストリーム」再開が決まったことで、両国の関係はほぼ撃墜事件以前の状況に戻ったといえる。