対カナダ貿易協定の調印延期濃厚に、首脳会議で承認できず

欧州連合(EU)首脳会議は10月21日、カナダとの包括的経済貿易協定(CETA)の調印に向け、全会一致の承認を目指して協議したが、地方政府の強い反対でベルギーの国内調整が不調に終わり、承認に至らなかった。EUとカナダは今月27日の調印を目指しているが、協定に反対するワロン地域政府とEUおよびカナダとの交渉は暗礁に乗り上げており、調印は先送りされる可能性が高まっている。

EU加盟国のうち27カ国はすでにCETAを承認しているが、ベルギーでは南部フランス語圏のワロン地域が投資家保護のための紛争解決手続きを定めた条項を問題視し、強硬に反対している。ベルギー政府自体は協定を支持しているものの、同国では7つの地域議会が全会一致で協定に調印する権限を連邦政府に付与する必要があるため、ワロン地域が妥協しない限りEUは協定を締結することができない。

18日の貿易相理事会で承認を先送りした後、欧州委員会とカナダはワロン地域の説得を続けてきたが、カナダのフリーランド国際貿易相は21日、「ワロン地域の説得は不可能なようだ。EUには国際的な貿易協定を結ぶ能力がないように見える」と発言。交渉が不調に終わったことを明らかにし、帰国の途に就いた。欧州委は引き続き交渉を進める方針だが、ワロン地域側は現在の協定では地元の中小企業や農業従事者などを保護することができないと主張し、強硬な姿勢を崩していない。

CETAはEUと米国が交渉中の環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)の「ひな形」と位置づけられており、CETA締結が先送りされた場合、TTIPや日本との経済連携協定(EPA)の締結交渉に影響が及ぶ可能性がある。トゥスクEU大統領は首脳会議後の会見で、EUが加盟国の意見をまとめられずにCETA締結が遅れた場合、「EUは国際社会で貿易パートナーとしての信頼性を失うことになる」と危機感を募らせた。

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