欧州の複数のトラックメーカーが大・中型トラックの販売でカルテルを結んでいた問題で、ドイツの物流企業が損害賠償訴訟の準備を進めている。訴訟を取りまとめる弁護士事務所への取材をもとに31日付『ハンデルスブラット(HB)』紙が報じたもので、来年半ばにも裁判所に訴状を提出する見通しだ。損賠請求額は莫大な規模に達するとみられ、トラックメーカーは財務を強く圧迫される恐れがある。
カルテルに参加していたのはMAN(独)、ボルボ/ルノー(スウェーデン/仏)、ダイムラー(独)、イベコ(伊)、DAF(蘭)、スカニア(スウェーデン)の6社(グループ)。欧州連合(EU)の欧州委員会はこのうちMANとスカニアを除く4社に7月、総額29億2,650万ユーロの制裁金支払いを命じた。内訳はダイムラーが10億877万ユーロ、DAFが7億5,268万ユーロ、ボルボ/ルノーが6億7,045万ユーロ、イベコが4億9,461万ユーロ。MANは最初に通報したため、制裁を全額免除された。スカニアは捜査が未終了のため制裁額が確定していない。
6社は1997年から2011年にかけてカルテルを結び、販売価格を取り決めていた。また、EU環境規制に対応した排ガス処理システムの導入時期と、同システムのコストを顧客に転嫁することを申し合わせていた。
国際弁護士事務所ハウスフェルトは同カルテルで被害を受けたとする独物流企業およそ1,000社から訴訟の委託を受けた。この問題の専用サイトを開設したことから原告となる企業は年末までに数千社に増えるとみている。
同カルテルは期間が14年と長い。この間に欧州で販売されたトラックの数は約1,000万台に上る。同弁護士事務所はトラック1台当たりの被害額を約1万ユーロと計算。被害総額が1,000億ユーロに達するとみている。
MANはHB紙の問い合わせに、同カルテルで欧州委が問題とした販売価格はカタログ価格だと指摘。カタログ価格は実際の厳しい販売交渉で何の意味も持たないとして、物流企業はカルテルで被害を受けていないとの立場を示した。