EU離脱決定をめぐる先行き不透明感が続く英国で、不動産投資が急速に縮小している。米調査会社リアル・キャピタル・アナリティクス(RCA)がこのほどまとめた欧州の不動産市場に関するリポートによると、英国における不動産投資額は2016年第3四半期に前年同期比51%減と落ち込み、4年ぶりにドイツが首位に立った。一方、不動産専門家を対象とした別の調査でも、欧州の投資先ランキングでドイツの主要都市が上位を独占する一方、ロンドンは27位にとどまり、投資家の関心が英国から大陸欧州に移っている現状が明らかになった。
RCAによると、英国における第3四半期の不動産投資額は約100億ユーロで、ドイツの136億ユーロを大きく下回った。ただ、欧州では数年前から不動産市場への活発な投資が続いていたが、今年に入り英国以外の多くの市場で投資が縮小している。これは需要増に伴い不動産価格が上昇した結果、取引が成立しにくくなったためと考えられる。RCAによると、欧州全体では第3四半期の不動産投資額が前年同期比88%減の460億ユーロと落ち込み、ドイツでも同38%減となった。
一方、米不動産関連の業界団体アーバンランド・インスティテュート(ULI)と米大手会計・コンサルティング会社プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が共同で、機関投資家、不動産デベロッパー、仲介業者など約800人を対象に行った調査によると、欧州で最も投資したい都市としてベルリンを挙げた人が最も多く、次いでハンブルク、フランクフルトと、ドイツ勢が3位までを独占した。これに対し、英国勢はバーミンガムの22位が最高だった。また、回答者の約90%が英国では今後も不動産価値の下落傾向が続くとの見方を示した。
ULIの欧州担当責任者は「英国のEU離脱決定を受け、以前から好調だったドイツの不動産市場に対する投資意欲が急速に高まった。欧州における政治・経済の不確実性を背景に、多くの投資家は高い利益より低リスクを重視するようになっている。こうしたリスク回避の投資傾向がドイツの主要都市の安定性をより魅力的なものにしている」と指摘している。