EU加盟国は8日開いた財務相理事会で、租税回避対策に非協力的な国・地域を列挙したEU共通の「ブラックリスト」を策定するための基準および審査プロセスで合意した。共通の判断基準に基づいて多国籍企業や富裕層による租税回避を助長しているタックスヘイブン(租税回避地)を特定し、EU全体で課税逃れ防止に向けた対策を強化する。
EUではこれまで加盟国が独自に非協力やタックスヘイブンのリストを作成し、対象となる税法域の監視を行ってきた。しかし、タックスヘイブンを使った富裕層らによる課税逃れの実態が明らかになった「パナマ文書」問題を受け、6月にEU共通のブラックリストを策定することで合意。欧州委が後発開発途上国を除く165のEU域外国・地域を対象に、税の透明性、優遇税制、法人税免除やゼロ税率の適用などについて検証を行い、9月に租税回避を助長している可能性のある81カ国・地域を公表している。
財務相理での合意によると、17年9月までに租税回避対策に非協力的な国・地域に該当するかどうかの審査を終了し、基準を満たしていない場合は改善を要求。同年末までに改善がみられない場合は当該国・地域をEU共通のブラックリストに掲載する。
一方、租税回避対策に非協力的な国・地域かどうかの判断は、当該国・地域が◇2017年末までに経済協力開発機構(OECD)の定める「金融口座に関する自動的情報交換(AEOI)」を開始しているか(または開始を確約したか)◇17年末までにOECDの「税源浸食と利益移転(BEPS)」勧告に盛り込まれた各項目の最低基準に合意しているか—-などが基準となる。
AEOIは外国の金融機関の口座を利用した国際的な脱税や租税回避に対処するため、OECDが策定した「共通報告基準(CRS)」に基づいて、金融機関が非居住者に係る金融口座情報を税務当局に報告し、これを各国の税務当局間で相互に提供し合う仕組み。一方、BEPS勧告には外国子会社合算税制の強化、利子損金の算入制限、ハイブリッド・ミスマッチ(法人の形態など税務上の取り扱いの違いを利用して課税を免れること)効果の無効化などが含まれている。