自動車大手の独フォルクスワーゲン(VW、ヴォルフスブルク)は18日、主力部門VWブランド乗用車の収益力強化に向けた協定を労使が締結したと発表した。電気駆動車やデジタル技術など今後の競争力のカギを握る分野を強化するとともに効率的な事業体制を構築する考えで、大規模な投資と並んで数万人規模の人員削減を実施する。
VWブランド乗用車はグループ販売の約6割を占めるものの、他のブランドに比べて収益力が大幅に低く、経営陣はメス入れを決断。従業員代表の事業所委員会と交渉を進めてきた。
今回の合意で労使は同部門の従業員をドイツだけで2万3,000人削減することを取り決めた。これと並行して9,000人の新規雇用を創出するため、実質の削減規模は1万4,000人となる。人員整理は定年退職と高齢者パートタイム制度の活用を通して進めていく考えで、経営上の理由による解雇は行わない。国外も含めると削減規模は3万人に上る見通し。同部門の従業員数は20万人強で、そのうちドイツは12万人を占める。
収益力の強化に向けては国内工場の生産性を約25%引き上げる目標で、総額35億ユーロの投資を実施する。2020年から利益を年37億ユーロ改善する考え。
今回の合意ではカッセル工場を電動パワートレインの中核拠点とすることや、ザルツギター工場に電池セルとセルモジュールのパイロット生産施設を設置することも取り決めた。(表を参照)
電気駆動車の生産、25年に100万台へ
22日にはVWブランド乗用車の長期事業計画「トランスフォーム2025+」を発表した。ブランド・ポジショニングの明確化と事業効率・生産性の向上、電気駆動車やモビリティーサービスの拡充を通して競争力を強化していく考え。量産車分野で世界トップに立つとしている。収益力強化に向けた労使協定の締結を受けて、同計画を公表した。
VWブランド乗用車はトランスフォーム2025+で打ち出した目標を3段階に分けて実現していく。第一段階は2020年までで、事業再編と並行して今後の競争のカギとなる分野で技術やノウハウを強化する。第二段階は25年までで、電気駆動車の分野で世界トップに立つとともに、モビリティーサービスなど収益力の基盤となる事業を拡大していく。最終段階の25~30年には電気駆動車やモビリティーサービスが幅広く普及した新しい市場環境下で業界を主導する立場に立つ目標だ。
量産車分野で世界トップを獲得するためには同ブランドの存在感が薄い北米などの市場で攻勢をかける。まずはこれまで手薄だったSUVモデルの種類を大幅に拡充。20年からは電気駆動車も次々と市場投入していき、25年までに同生産台数を年100万台へと引き上げる。同車両分野の世界最大手となる考えだ。
米国市場には同地で人気の高い大型SUVとセダンを重点投入。21年からは電気駆動車の現地生産も開始する。
中国、インド、ロシア、南米など新興市場では低価格車を投入して市場を掘り起こす。
電気駆動車の拡充に必要な資金は収益力の低いエンジン車両のモデルバリエーション削減を通してねん出する。年25億ユーロ以上を確保する考えだ。
デジタルサービスの強化に向けては独自のプラットフォームを開発し、25年までに世界で8,000万人の利用者を獲得する。コネクテッドカー関連サービスでは同年までに売上高を約10億ユーロへと引き上げていく。
売上高営業利益率は15年の2%から20年に4%へと拡大。25年には6%を確保する。