欧州委員会は22日、企業の倒産手続きに関するEU共通ルールの導入に向けた指令案を発表した。企業が再建型の倒産手続きを進め、清算を回避できるようにするのが狙い。旧経営陣が経営を続けながら債務処理に取り組み、再建を図るための手続きを定めた米連邦破産法第11条(チャプター11)のEU版を導入する格好となる。
EUでは加盟国によって倒産手続きのルールがばらばらで、再建型の倒産手続きが整備されている国は少ない。欧州委は現状のままでは域内の国境を超えて活動する企業の倒産手続きに多くの時間、コストがかかるほか、再生が可能な企業が清算に追い込まれるケースが後を絶たないとして、共通のルールを設け、再建を後押しするための法整備を進めることを決めた。
欧州委の提案は、破綻した企業に再建に向けた債務再編の時間的余裕を与えるのが柱。倒産手続きを開始してから最長4カ月間にわたって債権者と交渉できるようにし、その間は債権回収や資産差し押さえ、訴訟などから保護する。交渉が進展しながらも、期限内にまとまらない場合は、同期間を最長1年に延長することを認める。
また、倒産してから債務が帳消しとなるまでの期間を3年とすることを盛り込んだ。加盟国では多くの国で同期間が3年より長く、ドイツでは7年となっていることから、現在よりも短縮されることになる。
このほか欧州委は、経営が悪化している企業が再建不能となる前に債務再編に着手するため、債権者の銀行の権限を強化し、早い段階に手続きを開始できるようにすることも提案した。
欧州委によると、EU内では毎年、20万社が倒産に追い込まれ、170万人が失職している。また、世銀の調査では各国の手続きが異なるため、債権回収率は国によって30~90%と大きな格差がある。欧州委は共通ルールの導入によって、破綻した企業に「第2のチャンス」が与えられ、清算を避けられるケースが増えると指摘。債権者にとっても有益で、域内金融システムの安定化につながり、起業を促進して域内経済を活性化する効果も期待できるとしている。