「国別排出上限指令」でPM2.5も規制対象に、農業界の反対でメタンは見送り

欧州議会は23日の本会議で、EU全体で大気汚染による健康被害を減らすための規制強化案を賛成多数で可決した。加盟国ごとに大気汚染物質の排出上限を定めた「国別排出上限指令」を見直し、2030年までに人体に影響を及ぼす5つの有害物質の排出量をEU全体で約50%削減する。閣僚理事会の正式な承認を経て新ルールを導入する。

EUでは世界保健機関(WHO)の指針に基づいて大気汚染物質の制限値を設定し、加盟国にモニタリングと削減計画の策定・実施を義務付けた「大気質枠組み指令」をはじめとするさまざまな規制が導入されており、この30年間に二酸化硫黄(SO2)や一酸化炭素(CO)など、人体に悪影響をもたらす物質は以前に比べて大幅に削減された。ただ、多くの加盟国で達成期限を過ぎても大気汚染物質の濃度が規制値を超えているのが現状で、域内で年間およそ40万人が大気汚染による健康被害が原因で早期に死亡している。欧州委はこうした現状を改善するため、2014年1月に国別排出上限指令の見直しを柱とする規制強化案を発表。加盟国と欧州議会で検討が進められていた。

光化学スモッグをもたらす地表でのオゾン生成や酸性雨の原因となる物質の排出上限を定めた国別排出上限指令について、欧州委は従来から規制の対象になっている二酸化硫黄(SO2)、窒素酸化物(NOx)、アンモニア(NH3)、揮発性有機化合物(VOC)に加え、微小粒子状物質(PM2.5)とメタンについても排出上限を設けることを提案していた。しかし、メタンの主な発生源である農業部門からの反発が根強く、本会議では従来からの規制対象にPM2.5を加えた5物質について、30年までに達成すべき排出上限値を設定する案が採択された。

上部へスクロール