伊大手銀の自力再建に暗雲、首相の辞任で

伊大手銀行バンカ・モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(BMPS)の経営再建に暗雲が漂ってきた。伊レンツィ首相の辞任による政局の混迷で、不良債権処理に向けた大規模な増資計画がとん挫する恐れが高まってきたためだ。同行は11日、自力再建に向けて増資を進める意向を表明したが、投資家が応じるかどうか不透明で、政府が救済に乗り出す可能性が浮上している。

国内3位銀行のBMPSは不良債権が経営を圧迫しており、7月に50億ユーロの増資を発表。欧州中央銀行(ECB)から12月末までに完了するよう求められている。しかし、レンツィ首相の辞任が決まり、政局が不透明となったことで、海外のファンドなどが引き受けに消極的な姿勢に転じた。

これを受けてBMPSは7日、期限を1月20日まで延長するようECBに要請。同行は返答がないとしているが、主要メディアによるとECBは9日に拒否を決めたとされる。

BMPSは新株発行の規模をできる限り減らすため、債券の証券化を進めているが、ロイター通信によるとこれまでの調達額は約10億ユーロにとどまっており、増資で40億ユーロを集める必要がある。

同行は11日の取締役会で、増資を断念しないことを決めた。ジェンティローニ外相が同日、次期首相に指名され、政局の不透明感が払しょくされるとの期待が背景にあるもようだ。一方、債券の証券化を拡大し、機関投資家に加えて個人の債券保有者にも証券化に応じるよう求めることを決定。これによって約20億ユーロを確保したい考えだ。

伊政府は増資が不調に終わると同行が経営破綻に追い込まれ、国内金融システムを大きく揺るがす事態となることから、公的資金注入による救済を検討しているもよう。ただ、EUでは銀行の公的救済に際して、まず債権者に負担させることを義務付ける「ベイルイン」制度が導入されたことから、大きな痛みが伴う。政府は当初、公的救済を検討したが、多くの個人投資家に損失が生じ、政権への批判が強まりかねないことから断念し、民間資金を活用する再建に舵を切った経緯がある。

新政権も公的救済に切り替えれば、約4万人に上るとされる個人投資家に損失が生じ、政府への不満が高まることから、BMPSに自力再建の望みを託しているが、失敗に終わって救済に乗り出す場合は損失の一部を補償するとの見方も出ている。

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