中国商務省は12日、EUと米国が中国を「市場経済国」と認定しなかったことを受け、世界貿易機関WTO)への提訴に向けた手続きを開始したと発表した。WTOの紛争解決手続きに基づく二国間協議を米欧に要請しており、反ダンピング(不当廉売)措置を発動する際の課税方式を改めるよう求める。協議(通常60日以内)が不調に終わった場合、紛争解決機関にパネル(小委員会)の設置を要請することになる。同じく市場経済国の認定を見送った日本は今のところ対象に含まれていないが、中国製の安価な鉄鋼製品などをめぐり、同国と日米欧の通商摩擦が一層激化する可能性がある。
中国は2001年のWTO加盟から今月11日で15年を迎え、当初15年間は「非市場経済国」として扱うとの規定が失効した。中国政府は同日付で自動的に市場経済国に移行すると主張してきたが、日米欧は認定を見送った。非市場経済国であれば第3国の価格をもとに不当廉売かどうか判断できるが、市場経済国と認めた場合、輸出価格が国内価格より大幅に安いと調査で証明する必要があるため、安価な輸入品に対して反ダンピング措置を発動することが困難になり、自国の製造業者はより一層厳しい競争にさらされることになるためだ。
中国商務省は声明で「中国はさまざまなチャンネルを通じて第3国との比較(に基づくダンピング課税の算定方法)を改めるよう求めてきた。EUと米国が撤廃に向けた措置を講じていないことは極めて遺憾だ。WTO加盟国の中でEUと米国は反ダンピング措置を最も頻繁に発動しており、中国の輸出と雇用に重大な影響を及ぼしている」と指摘している。
中国側が日米欧の対応に反発を強め、市場経済国と認めなければWTOの協定違反で提訴すると警告していたことから、欧州委員会は先月、中国が市場経済国に移行した場合でも、ダンピングに対して効果的に対抗策を講じることができるようにするための制度改正を提案した。WTO加盟国で補助金などによる市場の「著しい歪み」が輸出価格に影響を及ぼし、それによって輸入国の産業が損害を受けた場合、輸出国と経済状況などが似通った第3国の製品価格をもとに対抗策を講じることができるようにする、という内容で、現在、欧州議会と閣僚理事会で検討が進められている。
欧州委の報道官は12日、中国側から二国間協議の要請を受けたことを確認したうえで、「欧州委が(反ダンピング課税をめぐる)ルール変更を提案しているにもかかわらず、中国政府がWTO訴訟の手続きに入ったことを遺憾に思う」とコメントした。