ポーランド、EV振興を強化

ポーランド政府が電気自動車(EV)を振興するため様々な助成策を打ち出している。同国では石炭が盛んに利用され大気汚染が問題となっており、政府は環境改善を目指しEV普及台数を2025年までに100万台に引き上げる目標を掲げている。政府の振興策には中小企業のみならず大企業や研究機関も参加することが可能となっている他、外資系企業も参加することが可能だ。

国家研究開発センター(NCBR)はポーランドに生産拠点を置く企業に対し補助金を支給することでEVの開発を促進しようとしている。助成対象となる事業にはポーランドに拠点を置き納税する外国企業も参加することができる。

NCBRは2007年以来ポーランドでのEV開発を支援してきた。これまでに250億ユーロを支出してきたが目立った成果は出ていない。そのためNCBRは今後は欧州連合(EU)の助成金を単一のプロジェクトのみならず分野横断的なテーマにも支給することにする予定だ。初めてのプロジェクトは近距離の電動旅客輸送システムで助成額は2,000万ユーロを上回る。

企業は助成金のみならず将来の買い手をも探している。近距離輸送システムの場合、需要者は地方自治体か、ポーランドポストやエネルギー企業のような多くの車両を必要とする国営企業である。

助成プログラムの1つ「Innomoto」の予算規模は約6,000万ユーロ。対象となるのは、自動車関連の材料及び生産技術分野、代替エンジンを持つ小型都市交通システム、自動車ボディー、従来型エンジン及び代替エンジン、革新的な自動車部品などが含まれる。各企業はそれぞれ最大45億ユーロの助成金を申請することが可能だ。

このうち、ポーランドの老舗企業でトラクターなどを生産するウルスス(Ursus)は、小型輸送機器のプロジェクトへの助成金を申請しており、他の企業と共に最大積載量3.5トンの電動商用車の開発を目指している。同車両には枠組みを除き複合材を利用する予定だ。同社は遅くとも3年以内に生産ラインを稼働させる考えだが、同社のザライチュク社長は、「当社は開発される車両に大きな期待はしていない」と話す。自動車メーカー大手の協力なしで複合材を使用した車両を開発した企業は多くはないためだ。

ウルススの同プロジェクトでは他社の既存技術を利用する方針で、コストを一定の枠内にとどめる必要がある。「小型輸送車の開発と生産開始までには1,000万ズロチ(約230万ユーロ)かかる」と同氏は話す。同氏は国内市場ではEVの乗用車には大きな期待は持てないと話し当面は高級品に留まるとの見方を示した。

政府はEV開発計画で電動都市交通車両の開発を目指している。それを受け同国のエネルギー企業エネア(Enea)、エネルガ(Energa)、PGE及びタウロン(Tauron)は昨年10月、資本金1,000万ズロチで合弁会社エレクトロモビリティ・ポーランド(ElectroMobility Poland)を設立した。これらの企業はワルシャワ技術大学や国立自動車研究センターと協力してeモビリティセンターを立ち上げており、eモビリティ分野の研究活動を集約し同国での新分野を開拓しようとしている。

ポーランドの自動車産業は既に一定の地位を確立しておりエンジン以外の部品は国内で調達できる。10月初めには韓国の電子機器大手LGが3億ユーロを投じてヴロツワフ近郊のビスクピツェ・ポドゴルネに新工場を建設する計画を明らかにしている。バッテリーの生産が始まれば国内でのEV生産体制は整う見通しだ。(1PLN=27.99JPY)

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