スコットランド自治政府のスタージョン首相は12月20日、英国がEUを離脱した後もスコットランドがEU単一市場にとどまるための方策を発表した。英国が単一市場へのアクセス維持よりも移民制限を優先する「ハード・ブレグジット(強行離脱)」を選択した場合、独自の移民政策を導入し、EUから単一市場残留を取り付けることを提案。さらに、英国からの独立も辞さない方針を打ち出した。
英国で6月に実施されたEU離脱の是非を問う国民投票では55%が離脱に賛成したが、スコットランドでは残留派が62%と多数を占めた。残留派だったスタージョン首相は、スコットランドが英国の道連れにされ、EU単一市場から締め出されるのは受け入れがたいとして、英国からの独立を問う住民投票の再実施に関する法案を10月に発表していた。
スタージョン首相は「スコットランドの欧州での地位」と題した政策文書で、英国がEUとの離脱交渉で、単一市場残留が決まるのが望ましいとしながらも、英政府が移民制限にこだわって強硬離脱する場合は、独自で単一市場にとどまる道を模索する意向を表明。移民政策などに関する権限の委譲を英政府に求め、スコットランドがEUからの移民を引き続き受け入れることで、欧州経済領域(EEA)や欧州自由貿易連合(EFTA)加盟国と同様の形で単一市場に参加するという方針を示した。これが不可能な場合は、英国からの独立を目指すとしている。
これについて英国のメイ首相は同日、提案を「真剣に検討する」としながらも、連合王国の中でスコットランドだけがEUと特別な関係を築くのは認められないと指摘。また、仮にスコットランドが英政府の承認を得て独立をめぐる住民投票を実施し、独立を決めたとしても、EU単一市場と比べて4倍の利益をもたらしている英市場から離脱する方が損失が大きいことなどから、「非現実的な提案だ」と批判した。