欧州議会の単一市場委員会は9日、域内で販売される自動車の型式認証制度の改革案を賛成多数で可決した。独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)による排ガス規制逃れを受けて欧州委員会が昨年1月にまとめた原案をもとに、すでに市場に出回っている認証済みの車両をチェックする「市場監視」システムの運用ルールなどを盛り込んだ内容になっている。欧州議会本会議で近く採決を行い、その後、EU閣僚理事会で改革案について協議する。
自動車メーカーは新型車を投入する際、各国当局が指定する検査機関で安全や環境基準に適合しているかどうかの審査を受けて認証を取得しなければならないが、すでに市場に出回っている車両が再び検査を受けることはない。VWは試験時だけ排ガス浄化機能をフル稼働させる違法ソフトを搭載して有害物質の排出を抑えていたことから、欧州委は認証済みの車両を対象に抜き打ち検査を実施したり、違反が見つかった場合はメーカーに制裁金を科すことができる制度の導入などを柱とする型式認証制度の改革案を提示した。
単一市場委で可決された修正案によると、各国当局は「市場監視プログラム」を策定し、欧州委の承認を得たうえで、市場に出回っている車両に対して抜き打ちで適合検査を実施する。その際、同じ型式の車両に対して同様の検査が繰り返し行われることがないよう、当局間で情報を共有して検査内容を調整することが認められる。また、欧州委は必要に応じて各国当局に適合検査を命じることができるが、状況に応じて自ら検査を実施する権限も持つ。
一方、メーカーと検査機関の馴れ合いがもたらす弊害を排除するため、メーカーが直接、検査料を納める現行システムを改め、各国当局がメーカーから検査料を徴収する制度に移行する。また、市場監視にかかる費用は国が負担することとし、規制当局が適正かつ公正に検査を実施できる体制を確保する。
さらに市場監視を通じて違反が確認されたにも拘わらず、認証を与えた国の当局が適切に対応しない場合、欧州委は当該メーカーに対し、問題となる型式の車両1台につき最大3万ユーロの制裁金を科すことができる。