欧州議会は15日、欧州連合(EU)とカナダが昨年10月に調印した包括的経済貿易協定(CETA)を賛成多数で承認した。カナダ下院も14日、CETAを承認するための法案を可決しており、上院での採決を経て3月中に正式承認される見通し。これにより、早ければ4月1日付で協定が暫定発効し、貿易品目の99%で関税が撤廃される。
CETAはEUが主要7カ国(G7)と結ぶ初めての自由貿易協定(FTA)となる。発効するとEU・カナダ間の貿易取引は20%拡大し、EU経済は120億ユーロ、カナダ経済も120億カナダドル(約90億米ドル)押し上げられるとの試算がある。ただし、投資条項などを含む協定の完全な発効には、すべてのEU加盟国の議会のほか、ベルギーなど一部の国の地方議会の批准が必要となる。
EUとカナダは2009年に交渉を開始し、14年9月に協定案の内容で基本合意した。昨年2月には争点になっていた投資をめぐる企業と国家の間の紛争処理をめぐり、環太平洋経済連携協定(TPP)などに盛り込まれている「投資家対国家の紛争解決(ISDS)」条項に代わるメカニズムとして、EUが提案した二審制の裁判制度を導入することでも合意。しかし、EU内でグローバル化に反対する動きが広がるなか、ベルギー南部ワロン地域議会の反対で正式署名が延期され、一時はCETAの締結が危ぶまれる場面もあった。
欧州議会の最大会派である欧州人民党グループ(EPP)所属のパブリクス議員(ラトビア選出)は声明で、「CETAを承認することでEUは保護主義や景気停滞ではなく、オープンで成長可能な、高い水準の経済社会を選択する。カナダはEUと価値観を共有する信頼できる同盟国であり、双方の市民のために壁ではなく、橋を築くことができると確信している。CETAは世界の通商協定にとって『灯台』の役目を果たすだろう」と語っている。