EU加盟国は2月28日、ブリュッセルで環境相理事会を開き、EU排出量取引制度(EU-ETS)第4フェーズ(2021~30年)に向けた制度改革案の内容で合意した。欧州議会は2月半ば、欧州委員会の原案に一部修正を加えた制度改革案を賛成多数で可決している。欧州議会とEU議長国マルタは直ちに協議を開始して最終案をまとめ、早期の正式合意を目指す。
欧州委が2015年7月に提示した制度改革案によると、EU-ETS第4フェーズでは対象部門からの二酸化炭素(CO2)排出量を30年までに05年比で43%削減するとの目標を達成するため、対象施設の割当総量の削減率を、現在の年1.74%から21年以降は2.2%に引き上げる。達成状況に応じて、早ければ24年以降、削減率を年2.4%に引き上げることも提案に盛り込まれている。
一方、排出枠の需給バランスを改善して排出権価格を下支えするため、19年1月から「市場安定化準備(MSR)制度」が導入される。これは余剰排出枠を一旦リザーブしておき、需給がひっ迫した場面で取り崩して排出権価格を安定させる仕組み。欧州議会に続き、環境相理でもMSRの規模を当初の構想の2倍に拡大し、余剰排出枠の最大24%を吸収できるようにする修正案が承認された。
このほかEU-ETSでは鉄鋼産業、化学産業、エネルギー産業などCO2排出量の多い企業がEUの厳しい規制を回避するため、域外に移転してしまう「カーボンリーケージ」を防ぐため、部門横断的補正係数(CSCF)と呼ばれる制度を設け、対象施設への排出枠の無償割当量を部門ごとに調整できる仕組みを導入している。無償割当以外の排出枠はオークションで購入しなければならないが、環境相理では無償割当で獲得できる排出枠を2%拡大することでも合意した。