欧州委員会は23日、金融サービス分野で単一市場を実現し、EU市民が国境を越えて質の高いサービスに自由にアクセスできるようにするための行動計画をまとめた。その一環として、最先端のICT(情報通信技術)やビッグデータなどを活用した金融サービスである「フィンテック」の促進に向けて事業者に対する規制のあり方を検討するため、各方面からの意見募集を開始した。
フィンテックはスマートフォンを使った決済や資産運用、ビッグデータや人工知能(AI)などの先端技術を駆使した金融サービスを指す。米ペイパルのオンライン決済サービスなどが代表例だが、最近は中小企業向けのオンライン貸出プラットフォームなども運用されており、IT系ベンチャー企業などが既存の金融機関と同様のサービスを提供するケースも増えている。欧州委はEUが成長戦略の柱と位置づけるデジタル経済の活性化に向け、域内のデジタル市場を統合する「接続されたデジタル単一市場」構想の一環として、フィンテックが金融サービスにもたらす可能性や課題を明らかにする目的で、議論のたたき台となるコンサルテーションペーパーをまとめた。
欧州委はこの中で、フィンテックに対する規制について、技術的な中立性、事業規模に応じた規制、競争促進という3つの観点から検討する必要があると指摘。たとえばフィンテック事業者向けに金融当局が「特別ライセンス」を発行し、自己資本規制比率を低く設定するなど、スタートアップ企業が参入しやすい環境を整備する必要性などについて検討する方針を示している。さらに、意見募集を通じてAIによる投資判断や、端末間で処理される融資に伴う不正リスクなどの問題点を明らかにし、消費者保護を図るための取り組みも進めると説明している。
意見募集の期間は6月15日まで。欧州委は各方面から寄せられる意見をもとに、必要に応じて規制案の策定に着手することになる。