スコットランド、独立めぐる住民投票実施へ始動

英国のEU離脱に批判的なスコットランド自治政府の議会は3月28日、英国からの独立の是非を問う住民投票の再実施に向けて、自治政府が英政府と交渉を行うことを賛成多数で承認した。これを受けて自治政府のスタージョン首相は、英政府に住民投票実施を求めるが、メイ首相は応じない姿勢を堅持しており、実現は難しそうだ。

英国で6月に実施されたEU離脱の是非を問う国民投票では55%が離脱に賛成したものの、スコットランドでは残留派が62%と多数を占めた。残留派だったスタージョン首相は、2014年に実施した住民投票で独立が僅差で否決されたが、英国がEU離脱を決めたことで状況が変わったとして、2度目の住民投票を実施する方針を打ち出し、自治政府の議会に英政府と交渉を開始する権限を与えるよう求めていた。議会ではスタージョン首相が党首を務めるスコットランド民族党(SNP)などが支持に回り、自治政府の方針が賛成69、反対59で承認された。

独立論が再燃したのは、英国がスコットランドの民意に反してEU離脱を決めただけでなく、EUとの離脱交渉で移民制限を優先し、EU単一市場からの離脱も辞さない構えを示していることが背景にある。英国の道連れで単一市場から締め出されるのは受け入れがたいという言い分だ。スタージョン首相は採決前の演説で、「スコットランドの人々に、スコットランドの将来の方向を選択する権利を与えるべきだ」と延べ、住民投票再実施の正当性を強調した。

英政府は29日、EUに離脱を正式に通告した。5月にも離脱交渉が開始される見込みとなっている。スコットランド自治政府は英国とEUの離脱交渉が大詰めを迎え、どのような形で離脱するかが固まる18年秋から19年春にかけて住民投票を実施したい考えだ。

独立の是非を問う住民投票の実施は、英政府の承認が必要となる。英政府は交渉に応じない方針だが、強硬な対応はスコットランドを刺激し、独立派を勢いづかせることになりかねない。このため政府は28日発表した声明で、真っ向から要求を拒否することを避け、「英国とEUの将来の関係がどうなるか分からない時点での住民投票は適切ではない」という理論武装で反論した。これは裏を返せば、英がEUを離脱した後であれば、住民投票実施に応じる用意があることを示唆するもので、英政府はEU離脱交渉に加えてスコットランド独立問題という難題を抱えることになる。

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