KSB―内部対立や税務調査で経営混乱―

ポンプ・バルブ大手の独KSB(フランケンタール)が企業形態の変更を巡る意見対立や脱税疑惑の税務調査で混乱している。今年1月に決定された株式会社からの会社組織変更を巡っては内部で意見が対立し監査役が相次いで辞任した。また旧経営陣らに対する脱税疑惑で税務調査を受けている。さらに、2016年は減収減益に陥り経営戦略の見直しも迫られている。

同社の取締役会と監査役会は1月初めに株式会社から欧州株式合資会社(SE&Co.KGaA)への企業形態の変更を決定した。しかし、再編に伴い監査役会の影響力が失われることに反発する監査役会代表を含む監査役2人が2月に辞任した。5月10日の株主総会で承認を求めることが予定されているが、それを前にしてほぼ全ての株主代表が監査役会から去った。

監査役らが懸念していたのは、創業者一族のクラウス・キューボルト氏の影響が残ることだった。同家は株式をほとんど保有していないが、議決権のある同社株の80%をKSB公益財団が保有しており、それを管理する有限会社クライン・プンペンの社長はキューボルト氏が務めている。こうした所有構造とキューボルト氏の影響力が論争の的になってきた。

従業員代表の協力を得てキューボルト氏は組織変更を進めている。監査役会代表には家庭用品大手WMFの前社長であるクラウス・フローア氏を充てることが提案されているほか、キューボルト氏の兄弟のモニカ氏とザールランド経営者団体連合のオズワルド・ブベル会長が新たに監査役会に加わることになっている。

一方、同社は大掛かりな税務調査を受けている。担当する会計大手のデロイトは以前の経営陣に対し送った書簡で、土地、駐車場、不動産、サービス並びに有限会社クライン・プンペンおよびキューボルト夫妻らに対する贈与などで脱税の可能性があると示唆している。KSBの関係者は、会計事務所による税務調査が実施されているが、当局の税務調査は入っていないと話している。

2016年の売上高は前年比7%減の約22億ユーロ。税引き前利益は前年の9,300万ユーロから7,500万ユーロに減少するなど業績の悪化も混乱に拍車をかけている。昨年は従業員620人を削減した。

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