欧州委、ロールスロイスのITP完全子会社化を承認

欧州委員会は19日、航空機エンジン大手の英ロールスロイスがスペインの同業インダストリア・デ・ターボ・プロパルゾレス(ITP)を完全子会社化する計画を承認したと発表した。ただし、ロールスロイスとITPが共に参加する軍用機エンジン製造のコンソーシアム「ユーロプロップ・インターナショナル(EPI)」に関連した利益相反を排除することが承認の条件となる。

ロールスロイスは昨年7月、スペインのセネルとの合弁会社であるITPの残り株式53.1%を取得し、完全子会社化する計画を発表した。ITPは大型旅客機用のエンジンおよび部品の製造や保守を手がけ、ボーイング「ドリームライナー」やエアバス「A350」に搭載されているトレントエンジンの供給でロールスロイスと組んできた。

ロールスロイスによるITPの完全買収は大型旅客機用エンジン事業の収益強化が狙いだが、欧州委は両社が仏国営スネクマ、独MTUエアロエンジンと共にEPIを構成している点に着目。EPIはエアバスの軍用輸送機「A400M」向けエンジンを供給しているが、ロールスロイスは同機と競合関係にある米ロッキードマーチン社の「C-130」のエンジン製造元であるため、買収計画を認めた場合、EPIの意思決定プロセスにおいてロールスロイスの発言力が強まり、軍用機向けエンジン市場で競争が阻害される恐れがあると指摘していた。

ロールスロイスは欧州委の懸念に対応するため、EPIのガバナンスに関してITPの買収に伴って生じる利益相反を排除することを確約。欧州委はこれを受け、ロールスロイスとITPの取引を認めても競争が阻害される可能性は極めて低いと判断した。

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