欧州連合(EU)の欧州委員会は2日、難民危機に対応するためにシェンゲン協定の一部加盟国が一時的に復活させている国境審査について、11月までに同措置を解除するよう勧告した。欧州国境沿岸警備隊の発足や密航者の送還に関するトルコとの協定により、EU域内への難民の流入は大幅に減少したものの、現在もなお多くの不法移民がギリシャに留まっている。このため欧州委はドイツやオーストリアなど5カ国が実施している国境審査の6カ月延長を認めたうえで、その間に警察当局の連携を強化し、人の自由移動を定めたシェンゲン協定の運用を正常化させるよう加盟国に促した。
EU加盟国の大半が参加するシェンゲン協定の圏内では、中東などから押し寄せる難民や移民の流入に歯止めをかけるための緊急措置として、2015年秋以降、ドイツ、オーストリア、デンマーク、スウェーデンと、EU非加盟国のノルウェーが相次いで国境審査を復活させた。同協定の第26条は、治安などに深刻な脅威がある「例外的な状況」に限り、加盟国が原則6カ月の期限付きで国境審査を再導入し、改善がみられなければ最長2年まで継続することを認めている。EUでは半年または3カ月の期限付きでこれまでに3回、同措置を延長してきたが、5月中旬に新たな期限を迎えるため、欧州委がギリシャなどの現状をもとに勧告をまとめた。EU加盟国は近く閣僚理事会を開き、5カ国による国境審査の延長の可否を決定する。
欧州委のアブラモプロス委員(移民・内務・市民権担当)は声明で「シェンゲン協定の正常化に向けて具体的な措置を講じるべき時がきた。国境審査を延長するのは今回が最後になる」と強調。シェンゲン圏内の警察当局による連携強化や必要に応じた国境付近での検問などの代替措置により、国境審査と同等の成果が得られるとの見方を示した。