観光業の切り札~トルコ

経済を支える観光業が治安悪化で不振に陥っているトルコだが、そんな中で一人気を吐いているのが「植毛ツアー」だ。専門医院300軒以上が営業し、中東・湾岸地域を中心に世界中から顧客を集めている。

その人気の秘密は、経験の豊富な外科医が多く、設備も良いのに、価格が比較的安いことにある。ここ2~3年で業績が大きく伸びている。

パレスチナから来たというジャミールさん(27)は、「第一の目的は植毛で、観光はそのついで」と話す。フェイサル・アル・アハメドさんはすでに叔父さんが経験者で、「抜け毛が多くなり、禿げてきたので植毛を決意した」という。

タクシム広場など観光客が多く集まる場所では、頭を剃って病院のロゴ入りヘッドバンドをしている男性を多く見かける。あまり多いので「イスタンブールの新しいシンボル」というジョークまで飛び出している。

植毛クリニック「クリニックエクスペルト」のタリプ・タシュテメル取締役は、「価格もそうだが、手術・ケアの質が非常に重要」と語る。「トルコは美容整形外科、植毛術の先端にあるが、料金は安い。他の国では4倍するところもある」とし、コストパフォーマンスに成功の秘密があると説明する。

同医院では外国からの顧客には「空港からホテルまでのトランスファー、宿泊費、植毛手術、観光」を含めたパッケージを1,200ユーロで提供する。欧州では手術だけで6,000ユーロかかり、中東でもそれよりやや安いぐらいだという。

医療観光協会のエムレ・アリ・コダン顧問によると、医療サービスを受ける目的でトルコを訪れる人は一月当たり6万2,500人。うち、育毛目的は5,000人に上る。大半は中東及びアラビア半島からの客だが、ギリシャやイタリア、ロシアからの関心も高まっている。

トルコを訪れた外国人の数は昨年、前年比で30%減少したが、植毛客に限ると5%増加した。コダン顧問は「今年は植毛客が10%増えると見込んでいる。月6,500人も夢ではない」と楽観的だ。

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