雇用主は従業員の代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)に対し、人事計画に関する情報を適宜かつ包括的に提供するとともに、人事措置について同委と協議しなければならない。これは事業所体制法(BetrVG)92条1項に記されたルールである。事業所委には人事措置に対する拒否権(共同決定権)がないものの、雇用主は包括的な情報提供と協議を必ず行わなければならない。このルールを巡る係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が昨年11月の決定(訴訟番号:1 ABR 64/14)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。
裁判は精神科の大病院を相手取って同病院の事業所委員会が起こしたもの。
入院施設を持つ精神科の病院は精神科人事令(Psych-PV)4条の規定で、入院患者数や病気の種類・程度などをもとに必要とするスタッフ数を四半期に一回、算出することが義務づけられている。病院はこれをもとに、社会保険機関と予算交渉を行う決まり。この計算のための調査を1月、4月、7月、10月の第3水曜日に行うことになっているため、「期日調査(Stichtagserhebungen)」と呼ばれている。
被告病院は2012年半ばまで、期日調査の情報を事業所委員会に開示していたが、その後、開示しなくなったため、事業所委はBetrVG92条1項に定められた人事計画情報の包括的な提供義務に反するとして提訴した。
最高裁のBAGはこの係争で、原告の訴えを棄却した。決定理由で裁判官は、雇用主が事業所委に提供しなければならない情報は、人事計画に利用する情報に限られると指摘。期日調査はあくまで社会保険機関との予算交渉のために作成するもので、人事計画には利用されていないとして、事業所委に同調査の情報請求権はないとの判断を示した。