近年では多国籍企業の国境を超えたビジネスのグローバル化に伴い、各国の税務面での法整備の隙間を意図的に利用する形で、行き過ぎた節税策が可能となっています。
その具体的な節税策として、例えば税率の高い国では経費を増やし課税所得を抑えたり、税率が低い国に利益を移転したりとグループ内で利益調整が行われることが挙げられます。その結果、税率の高い国の税収は減少し、財政赤字は拡大します。また税率の低い国では逆に税収が増える事態が起こります。
経済協力開発機構(OECD)ではこのような状況下で、現在の国際課税原則や各国国内税法が有効に機能しているのかどうかを議論し、問題解決を目指した行動計画を策定しています。
この問題は「税源侵食と利益移転(BEPS=Base Erosion and Profit Shifting)」と呼ばれ議論されており、別途行動計画が通達されています。
ドイツでは近年よりOECDの上記行動計画に従い、BEPSに対応するにあたり、税務調査の枠組みで、特に親子会社間取引の適正さに関する情報開示を移転価格文書化を通じて要請します。移転価格文書化においても各国のコンプライアンス対応のため、マスターファイル、ローカルファイル及び国別報告書を作成する必要があります。グループ内取引があるにもかかわらず、まだ対策を取られていない企業は二重課税とそれによる追徴を避けるため、早急の対応が必要です。
またドイツではBEPS対応において、製品のコストに一定の利幅を加えて製品価格とするコスト志向型の価格設定を行うコストプラスアプローチは今後、税務当局により容認されなくなるリスクが高いため、上記を採用されている企業にとっては近い将来、収益確保モデルを再考・見直しする必要があるかもしれません。