欧州連合(EU)加盟国は5月29日に開いた閣僚理事会で、域内で販売される自動車の認証制度について協議し、欧州委員会の権限で市場に出回っている車両を対象に排ガス検査を実施したり、違反が見つかった場合はメーカーに罰金を科すことなどを柱とする改革案の内容で合意した。独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)による排ガス規制逃れを受け、欧州委の権限を拡大してEU全体で監視体制を強化する。加盟国、欧州議会、欧州委による3者協議の正式合意を経て新制度に移行する。
自動車メーカーは新型車を投入する際、各国当局が指定する検査機関で安全や環境基準に適合しているかどうかの審査を受けて認証を取得しなければならないが、すでに市場に出回っている車両が再び検査を受けることはない。VWは試験時だけ排ガス浄化機能をフル稼働させる違法ソフトを搭載して有害物質の排出を抑えていたことから、欧州委は昨年1月、認証済みの車両に対する抜き打ち検査や違反メーカーに対する罰則などを盛り込んだ型式認証制度の改革案を提示。欧州議会と加盟国の間で検討が進められていた。
閣僚理で承認された改革案によると、各国当局は認証済みの車両をチェックする「市場監視プログラム」に基づき、登録された新車のうち、少なくとも5万台に1台の割合で、実走試験による排ガス検査の実施が義務付けられる。欧州委は必要に応じて各国当局に適合検査を命じることができるが、状況によって自ら検査を実施することも可能。また、検査で違反が確認された場合、欧州委は当該メーカーに対して、問題となった型式の車両1台につき最高3万ユーロの罰金を科すことができる。
EU議長国マルタのカルドナ経済・投資・中小企業担当相は「排ガス試験をめぐる不正の再発防止に向け、欧州の型式認証システムに対する信頼を回復することが制度改革の最大の目的だ」と強調した。