VWが欧州顧客へ補償せず、欧州委と合意

欧州自動車最大手フォルクスワーゲン(VW)がディーゼル車の排ガスを不正なソフトウエアで操作していた問題で、EUの欧州委員会と同社はこのほど、域内の対象車種の保有者に補償金を支払わないことで合意した。欧州委はVWに補償金支払いを求めていたが、EU法上の問題があることから、要求を取り下げた。代わりにVWは当該顧客に任意の保証を行う。

VWグループは、ディーゼル車に違法ソフトがインストールされていたことが米当局の発表で2015年秋に発覚。米国では該当顧客から車両を買い取るほか、1人当たり最大1万ドルの補償金を支払うことを取り決めた。

欧州委はこれを受け、欧州の顧客にも米国の顧客と同様の措置を取るように要求し、昨年秋からVWと協議してきたが、同社はEUの法律は米国と異なり、EUの顧客に補償金を支払う義務はないと主張。欧州委の要求をはねつけてきた。同委はVWの立場を覆す法的根拠がないことから、要求を断念した。ヨウロヴァ委員はヴェルト紙に、「EUの消費者に対する不公平な取り扱いに対し迅速かつ効率的に対応するためにはより良い道具(法律)が必要だ」と述べ遺憾の意を示すとともに、今回の件を教訓に新たな法案の提案を行ったことを明らかにした。

VWが欧州の該当顧客に行う任意の取り組みは排気再循環システム、燃料噴射システム、排ガス処理システムに使われている計11の部品を対象に品質保証を行うというもの。補償期間はリコールで修理を行ってから2年間。総走行距離が25万キロを超えた車両は同保証の対象とならない。

同社はこれを「信頼を形成するための措置」と位置づけている。修理によって車両の寿命が短くなることはないことをアピールする考えだ。

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