事業所委にスマホ利用の請求権はあるか

従業員の社内代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)の活動に必要な情報・通信機器は、雇用主が提供しなければならない。これは事業所体制法(BetrVG)40条2項に明記されたルールであり、パソコンとインターネットの利用については事業所委員の権利としてすでに確定している。ではスマートフォンはどうなのだろうか。この問題をめぐる係争でヘッセン州労働裁判所が3月の決定(訴訟番号:16 TaBV 212/16)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。

裁判は複数の病院を経営する事業者を相手取って事業所委員会が起こしたもの。同委の委員長は週末や夜間でも従業員から連絡を受けられる状態でなければならないうえ、従業員とのアポイントを調整するために自身のデジタル・アポイントカレンダーに出先からでもアクセスできる必要があったことから、雇用主にネット接続機能のあるスマホの貸与を請求した。

これに対し雇用主は、スマホを貸与するのは患者治療のためにいつでも連絡がつく状態になければならない従業員に対してだけだとして拒否したため、事業所委は提訴した。

この裁判で2審のヘッセン州労裁は原告の訴えを認める決定を下した。決定理由で裁判官は、事業所委員長は◇被告が経営する複数の病院を定期的に訪問し、事業所委の事務所に不在となることがある◇出先で従業員とのアポイントを調整するためにはデジタル・アポイントカレンダーにアクセスしなければならない――ことを指摘。スマホは同事業所委員長が業務を行うために必要不可欠な機器だとの認識を示した。

また、被告が業務用スマホをすでに計66台、従業員に貸与しており、新たに1台購入しても費用は月およそ16ユーロ増えるに過ぎないことも指摘。被告に大きなコスト負担は発生しないとして、この点からも原告の請求を拒否できないと言い渡した。

最高裁への異議申し立ては認めなかった。

■ポイント

裁判官が今回の決定で示した判断は、事業所委員の活動に必要不可欠であれば雇用主はスマホを提供しなければならないというもの。必要としない事業所委員に対しては提供の義務がない。

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