欧州議会は6日、トルコで大統領の権限強化を柱とする憲法改正が実行された場合、同国のEU加盟交渉を即時停止するよう求める決議を採択した。強権姿勢を強めるエルドアン大統領が改憲でさらに強大な権限を握れば、人権や法の支配が損なわれる恐れがあると指摘。首相職の廃止などが実行された場合、直ちに加盟交渉を停止するよう欧州委員会と加盟国に求めた。
エルドアン政権は昨年7月の軍の一部勢力によるクーデター未遂事件をきっかけに、強権統治を加速させている。これまでに逮捕者はおよそ5万人に上り、約15万人の軍人や公務員が解雇された。裁判官と検察官の4人に1人が職を追われ、政権に批判的な150以上のメディアが閉鎖に追い込まれた。
今年4月には首相職と議院内閣制を廃止し、大統領が国家元首と行政の長を兼ねる政治体制への移行を柱とする憲法改正の是非を問う国民投票を実施。僅差ながら賛成派が過半数を占め、大統領に国会の解散や非常事態を宣言する権限が与えられた。EUはトルコが死刑制度を再導入した場合、直ちに加盟交渉を打ち切るとくり返し警告しているが、エルドアン氏は国民投票に勝利したことを受け、死刑制度の復活を示唆している。
決議は、エルドアン政権下でトルコの人権状況が悪化していると非難し、「国民投票で承認された憲法改正案がそのままの形で実行された場合、直ちに加盟交渉を停止するよう欧州委員会と加盟国に要求する」と表明。決議案をまとめたピーリー議員は「EU側の対応がエルドアン政権の強権統治を助長している」と述べ、状況が悪化する中でも静観の構えを崩さない欧州委や加盟国の姿勢を非難した。
トルコのEU加盟交渉は2005年10月にスタートしたが、EU側はトルコ国内の少数民族クルド人に対する人権抑圧などを問題視し、交渉は長く足踏み状態が続いていた。EUは昨年3月、ギリシャに密航した不法移民らをトルコに強制送還する見返りとして、EU加盟交渉を加速させることを約束。新たに経済通貨政策などの分野で協議入りした。しかし、クーデター未遂後にEUがエルドアン政権の対応を非難したことで、両者の関係は冷え込んでいる。
決議に拘束力はないが、欧州議会は昨年11月にも同様の決議を採択している。ユルドゥルム首相はEU加盟を目指す方針に変更はないと明言し、「EUは将来のビジョンを定め、トルコと共に歩むかどうかを決めなければならない」と強調。トルコ外務省は声明で「決議は誤った主張に基づいており、欧州議会の評判を損なうものだ。決定はトルコにとって何の意味も持たない」と反発した。