独自動車部品大手のマーレはこのほど、二酸化炭素(CO2)を用いた冷媒「R744」を使用したカーエアコンを開発した。2016年末から独自動車大手ダイムラーの高級車メルセデス・ベンツの量産車に導入されているという。独業界紙『オートモビルボッヘ』が報じた。同紙によると、マーレはドイツとチェコの工場で当該カーエアコンの部品を製造している。また、仏自動車部品大手のヴァレオもCO2を冷媒に使用したカーエアコンの開発を進めており、量産を間近に控えていると報じている。
CO2を使用した冷媒は、既存の冷媒「R1234yf」に比べると約10倍の高い圧力をかける必要があるほか、分子が小さいため特別なコーティングを施したチューブや新しい金属製のリング状シール部品(パッキンリング)が必要になるという。また、カーエアコンからCO2が漏れた場合、乗員が頭痛やめまいを起こす恐れがあるため、CO2濃度を検知するためのCO2センサーを開発する必要もある。
欧州連合(EU)では2017年1月から、域内で販売される乗用車に対し、新型モデルだけでなく、継続生産車にも地球温暖化係数(GWP)が150以下の冷媒を新車のカーエアコンに使用することが義務付けられ、すべての新車が新しい冷媒規制の適用対象となった。
これまでカーエアコン用冷媒として使われてきた「R134a」(GWP:1430)などの代替フロンに代わる冷媒には、「R1234yf」(GWP:1)があるが、ダイムラーは2012年に実施した独自の安全性能試験の結果、「R1234yf」は発火する恐れがあることが分かったとして、採用を見合わせる立場を明らかにした。ただ、2017年1月からCO2冷媒を全面的に導入することが困難なため、激しい正面衝突事故で同冷媒が燃える危険に対処する安全策を開発し、「R1234yf」とCO2を並行して導入する措置をとっている。