米シティがフランクフルトに中核拠点、英のEU離脱に対応

米金融大手シティグループは20日、EU域内のトレーディング業務の中核拠点をドイツのフランクフルトに置く方針を明らかにした。英国がEUから離脱すると、ロンドンに欧州事業の拠点を置く金融機関は域内で自由に営業できる「単一パスポート」を失う可能性が高いため、欧州中央銀行(ECB)の本部があるフランクフルトに軸足を移す。

英国のEU離脱に備えた業務移転計画は、シティの欧州・中東・アフリカ(EMEA)部門を率いるジェームズ・コウルズ最高責任者が行員に宛てた文書で明らかにした。同氏は「EU市場の変化に備えて新たな解決策を講じる必要がある。既存のインフラや人材面を考えると、EU域内におけるブローカー/ディーラー業務の中核拠点としてフランクフルトが第1候補になる」と説明。単一パスポートの取り扱いなどをめぐるEUと英国の交渉の行方が不透明な段階で、移転の時期や規模を判断することはできないとしたうえで、「一定の状況下で新たに150人程度を配置する必要があるだろう」と述べた。

コウルズ氏はさらに、EMEA事業の本社機能は引き続きロンドンに置くものの、アムステルダム、ダブリン、ルクセンブルク、マドリード、パリなど、EU内の他の金融センターでも「長い時間をかけてシティのプレゼンスを高めていく」と強調している。

英国のEU離脱を2019年3月に控え、ロンドンに欧州本社を置く金融機関は離脱後も確実に単一パスポート制度の適用を受けるため、EU域内に中核拠点を移す必要に迫られている。米モルガン・スタンレー、野村ホールディングス、三井住友フィナンシャルグループなどが中核業務をフランクフルトに移転する方向で検討しているほか、HSBCホールディングスは英政府がこのまま強硬路線を貫いて、EU単一市場へのアクセスを失う「ハードブレグジット」が確定した場合、最大1,000人をパリに異動させる方針を示している。

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