欧州委員会は2日、ポーランド政府に対し、欧州連合(EU)司法裁判所の命令に従い、欧州に残る最後の原生林として知られるビャウォビエジャの森での伐採を直ちに中止するよう警告した。欧州委は7月末、ポーランドが目指す司法制度改革がEUの基本理念である「法の支配」を損なうとして、1カ月以内の是正を求める勧告書を送付したばかり。欧州委はポーランドが森林伐採の中止命令に従わない場合、同国に対する違反手続きに新たな項目を追加すると警告している。
ポーランドとベラルーシの国境沿いに広がるビャウォビエジャの森はヨーロッパバイソンなどの希少生物が生息する欧州最大の原生林で、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界自然遺産にも指定されている。ポーランド政府は昨年5月、害虫被害の拡大を防ぐとの名目で同地域での大規模な伐採を許可したが、環境保護団体や科学者などからは商業目的との批判が高まっていた。
こうしたなかで欧州委は7月中旬、EU司法裁に対し、ポーランド政府に伐採をやめさせるよう求める仮処分を申し立てた。司法裁はこれに応じ、先月29日にポーランドに対して伐採の即時中止を命じた。しかし、ポーランド環境省は31日、裁判所の命令には従わず、伐採を継続する方針を発表。公共テレビなどで新たな伐採作業の映像が流れていた。
欧州委のアンドレーバ報道官は「すべての加盟国は法の支配の原則に基づいて司法裁の命令に従わなければならない。ビャウォビエジャの森で引き続き伐採が行われていることが判明した場合、(政府による司法介入を可能にする司法制度改革に関連した)ポーランドに対する違反手続きに新たな項目が加わることになる」と警告した。