EU統計局ユーロスタットが8月31日発表した同月のユーロ圏の消費者物価指数(速報値)は前年同月比1.5%の上昇となり、伸び率は前月の1.3%から0.2ポイント拡大した。これは4月以来4カ月ぶりの高水準。ただ、欧州中央銀行(ECB)が目標とする「2%をわずかに下回る水準」を依然として大きく割り込んでいる。
分野別の伸び率はエネルギーが4%と、前月の2.2%を大きく上回った。工業製品は0.5%、サービスは1.6%で、前月から横ばい。ECBが金融政策決定で重視する基礎インフレ率(価格変動が激しいエネルギー、食品・アルコール・たばこを除いたインフレ)は1.2%となり、前月と同水準だった。
ECBはユーロ圏のデフレ回避と景気下支えを目的に、ユーロ圏の国債などを買い入れる異例の量的金融緩和を15年3月に開始した。現在の買い取り額は月600億ユーロで、2017年12月末まで実施することになっている。
この効果でデフレ懸念が払しょくされたほか、ユーロ圏の景気が緩やかな回復を続けていることで、ECBは「出口戦略」を探っている。ドラギ総裁は7月の定例政策理事会後の記者会見で、量的金融緩和の見直しを「秋に議論する」と発言。9月または10月の理事会で、量的緩和の縮小について協議を開始する見込みとなっている。
ECBが来年以降に量的緩和を縮小するのは確実な情勢。国債などの買い取りをどの程度減らすかが焦点となっている。これに関して市場では、基礎インフレ率が依然として低水準にとどまっているほか、このところユーロ高・ドル安が進んでおり、大幅に量的緩和を縮小するとさらなるユーロ高を招き、景気に悪影響を及ぼすだけでなく、物価上昇圧力も輸入コストの低下によって弱まる恐れがあることから、緩やかなペースで縮小を進めるとの見方が広がっている。