フランス政府は8月31日、労働市場の改革に向けた改正労働法を公表した。企業に課せられている労働条件や雇用に関する規制を緩和し、失業率を改善するのが狙い。9月下旬に施行される見通しだが、労働組合からは従業員の解雇が容易になることなどを懸念する声が上がっている。就任3カ月を超えて支持率が急速に低下するなか、労組の反発を抑えて企業寄りの改革を推し進めることができるか、マクロン大統領の手腕が問われる。
フランスでは失業率がおよそ10%と、英国やドイツの2倍に上り、特に25歳未満の失業率は20%を超えている。マクロン大統領は硬直した労働市場の改革を公約の柱に掲げ、現行規制の見直しを進めていた。
改正法によると、解雇された従業員が訴えを起こし、労働審判所が不当解雇と判断したケースで、企業が支払う罰金に上限が設けられる。例えば就業期間が2年の場合、3カ月分の給与が上限となる。また、これまでは業種ごとの労使交渉で決められていた労働条件について、今後は各企業の労使間で協議し、市場の状況に応じて柔軟に賃金や労働時間などを調整できるようになる。
マクロン氏率いる「共和国前進」が過半数を占める議会下院は、既に本会議の採決を経ずに改正法を成立させる手続きをとっており、9月22日付で施行される見通しだ。フィリップ首相は記者会見で「企業経営者や海外の投資家にとって、現行の労働法は雇用や投資の妨げとみられているのが現実だ」と述べ、失業率を改善するには法改正によって硬直した労働市場を改革する必要があると訴えた。
これに対し、約70万人が加盟するフランス労働総同盟(OGT)のフィリップ・マルチネス代表は「恐れていた通りの内容だ」とコメント。今月12日に全国規模の抗議デモを実施する方針を明らかにした。
