度重なる弾道ミサイルの発射で注目される北朝鮮。国の運営には外貨が必要だが、その稼ぎ先の一つが欧州連合(EU)だという事実が衆目を驚かせている。
どうやって稼いでいるかというと、「労働者の派遣」だ。北朝鮮人権情報センター(NKDB)の調べによると、チェコやブルガリア、ルーマニアは、北朝鮮出稼ぎ者の劣悪な労働条件が表ざたになったのを受けて本国送還の措置をとったが、ポーランドとマルタでは依然として北朝鮮人が働いているという。
NKDBが国際ヘルシンキ人権連盟のポーランド現地事務所と共同で調査したところによると、2015年には推定約800人の北朝鮮人がポーランドで働いていた。世界での総数(国連推定値:5万人)に比べればわずかだが、EUでは最多だ。
主な職場は建設現場や造船所、農場。北朝鮮機関があっせん役となっており、労働者に支払われている国内最低賃金(415ユーロ前後=2015年)のうち、本人が手にするのはわずか60~290ユーロに過ぎない。
出稼ぎ者はポーランド到着直後に監視役に旅券を取り上げられ、単独行動は(部屋に一人でいることさえ)許されない。携帯電話もテレビも禁止だ。労働時間も長い。ある建設現場では、週5日労働で1日の労働時間は最長12時間に及んだという。日曜日は午前中に「自己批判」し、午後は外出できる。それでも、グループ行動が義務付けられて、お互いに見張り役を務めることになる。
ポーランドは、職場の安全基準がきちんと守られていないことが多い。それでも2014年にグダニスク造船所で北朝鮮労働者が火傷を負い死亡したとき、防護服も着ず、作業訓練も不十分、さらに社会保険にも加入していなかったことがわかり、ショックが走った。この人は朝6時から夜19時までが勤務時間だったという。
ポーランド外務省によると、昨年初めから北朝鮮国籍者には査証(ビザ)の新規発給をしていないという。北朝鮮の出稼ぎ労働者は年10億~19億ユーロの外貨を稼ぎ出すといわれる。北朝鮮政府に圧力をかけようと思えば、欧州以外の国も受入をストップしなければならないだろう。