ドイツのアンゲラ・メルケル首相は14日、フランクフルト国際モーターショー(IAA)の開幕式典で、ドイツの自動車業界に対し、ディーゼル車の排ガス規制逃れによる信頼喪失に苦言を呈した。その一方で、自動車産業がドイツの主要産業の一つであり、雇用確保や経済発展において重要であるとの認識を示し、有害物質の排出源としてディーゼル車を弾劾するような風潮にも警告を発した。
メルケル首相は、2年前に独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)・グループによる排ガス規制逃れが発覚し、「多くの信用が損なわれた」と述べ、「自動車業界は信用と信頼を取り戻すため、あらゆる手を尽くさなければならない」と強調した。
また、「(自動車業界は)規制の穴を過度に利用し、自身に損害をもたらしただけでなく、取分け消費者と当局を欺き、落胆させた」と指摘し、この信頼損失の回復は、自動車メーカーや部品メーカーにとって重要なだけでなく、従業員ならびに経済拠点としてのドイツの大きな関心事である、と強調した。自動車業界はドイツにとって業界就業者数が80万人を超える主要産業であり、メルケル首相は、「自動車業界が好調であれば、経済全体の追い風となる」と述べた。
さらに、健康に有害な窒素酸化物(NOx)の排出量が多いディーゼル車に対する批判が強まっている状況については、エミッションフリー車への転換は必至であるとして、自動車業界に技術革新を促す一方、「内燃エンジンはまだ何年も、場合によっては何十年も存在する」と述べ、従来の内燃エンジンも擁護した。また、メルケル首相は、温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)と、健康に害をもたらす窒素酸化物(NOx)の両方を削減しなければならない、と言及した。一方、自動車メーカーは、ディーゼル車は燃費が良いため二酸化炭素(CO2)排出量が少なく、欧州のCO2排出量の目標値の達成に寄与するとし、拙速なディーゼル車規制議論に懸念を示している。