欧州委員会は21日、デジタル経済における公平な課税を実現するため、国際的に事業展開する大手インターネット企業に対する課税制度の見直しに着手すると発表した。EU域内で活動する有力ネット企業が国によって異なる課税ルールを利用して、合法的に租税回避している現状に対処するため、利益ベースではなく、売上高に基づく課税方式の導入などを検討する。
欧州委によると、EU域内で事業展開する従来型産業の大手企業に対する課税率は平均23.2%であるのに対し、米アルファベット傘下のグーグルや米インターネット通販大手アマゾンをはじめとするネット企業の実効税率は、一般消費者向けビジネス(BtoC)で平均10.1%、企業間取引(BtoB)では8.9%にとどまっている。
欧州委は長期的な対策として、現在EU内で検討が進められている「共通連結法人税課税ベース(CCCTB)」と呼ぶ域内共通の法人課税ルールの仕組みに、ネット企業を対象とする課税ルールを盛り込むことを提案している。これは加盟国ごとに異なる課税ベースの算出方法を域内で統一し、多国籍企業などの課税逃れを防止するとともに、国境をまたいで活動する企業の税務コストを軽減して投資を促す狙いがある。
一方、短期的な対策として、欧州委は◇ネット企業の課税ベースを利益から売上高に移行する◇域内で得た広告収入を課税対象とする◇ネット企業への支払いに源泉徴収税を課す――という3つの案について検討を進める方針を示した。
多国籍企業の租税回避防止策をめぐっては、経済協力開発機構(OECD)が来春までに国際的な枠組みを提示することになっている。欧州委はOECDの提案を踏まえて最終案をまとめる方針だが、先進国の間で足並みが揃わず、OECDが有効な対策を打ち出せない場合は、EU独自に新たな課税制度を導入する意向を示している。