EU・カナダの貿易協定が暫定発効

EUとカナダの包括的経済貿易協定(CETA)が21日に暫定発効した。これによって貿易品目の約98%で関税が撤廃され、EU・カナダ間の貿易はおよそ20%拡大する見通し。ただ、投資条項などを含む協定の完全な発効には、全加盟国およびベルギーなど一部の国の地方議会の批准が必要で、すべての手続きが完了するのは数年先になる可能性がある。

CETAはEUが主要7カ国(G7)と結ぶ初めての自由貿易協定(FTA)。EUとカナダは2009年に交渉を開始し、14年9月に協定案の内容で基本合意した。EU内でグローバル化に反対する動きが広がるなか、ベルギー南部ワロン地域議会の反対で正式署名が延期され、一時は協定の締結が危ぶまれる場面もあったが、双方は昨年10月にCETAに調印。欧州議会は今年2月、カナダ側も5月に批准手続きを完了し、7月に暫定適用の開始時期で合意していた。

欧州委員会の試算によると、EU側の関税削減効果は年間5億9,000万ユーロに上る見通し。CETAの発効により、EUからはチーズ、ワイン、蒸留酒、カナダからは牛肉や豚肉などの輸出拡大が見込まれる。また、EUが確立してきた農産品などを対象とする140を超える地理的表示(GI)がカナダ国内でも保護される。このほか、カナダ側は州や自治体レベルでも政府調達で市場開放を進めることに合意しており、EU企業の参入機会が大幅に拡大するとみられている。

一方、最大の争点になっていた投資をめぐる企業と国家の間の紛争処理に関しては、環太平洋経済連携協定(TPP)などに盛り込まれている「投資家対国家の紛争解決(ISDS)」条項に代わるメカニズムとして、EUが主張していた二審制の裁判制度が導入される。

欧州委のユンケル委員長は「CETAはEUが掲げる通商政策を凝縮したもので、域内の企業とEU市民に恩恵をもたらす経済成長に貢献すると同時に、世界の貿易ルールを形成する土台になり得る」と強調。マルムストロム委員(通商担当)は「CETAは自由で公正な貿易を支える進歩的な協定だ」とつけ加えた。

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