EUは9月29日、エストニアの首都タリンで非公式首脳会合を開き、英国のEU離脱やポピュリズムの広がりに対抗するためのEU改革について協議した。加盟国はフランスのマクロン大統領が提唱する軍事、治安、財政面でEUの統合進化を図る改革案を踏まえ、2018年にかけて実行する改革の作業計画をまとめることで一致した。
トゥスクEU大統領は首脳会合後の記者会見で「安全保障、移民、失業といった問題に対する真の解決策を見つける」と強調し、作業計画には防衛協力の強化や単一通貨ユーロを柱とする経済通貨同盟の深化などの項目が盛り込まれると説明。早急に各国首脳と協議して2週間以内に作業計画案をまとめ、10月19~20日にブリュッセルで開くEU首脳会議での採択を目指す方針を示した。
マクロン氏は26日にパリのソルボンヌ大学で行った演説で、以前から表明していたユーロ圏共通予算の創設に加え、税制調和、EU共通の治安部隊や防衛予算の創設などを打ち出した。同氏は首脳会合後の会見で「2019年の欧州議会選挙までにEUの改革を進め、EU市民の信頼を回復しなければならない。2018年は欧州にとってチャンスの年になる。5年後や10年後では遅すぎる」と発言。先のドイツ総選挙でメルケル首相が続投を決めたことを念頭に、独仏で政治体制が固まった今こそEU改革を一気に加速させるべきだと訴えた。
メルケル首相も各国首脳による28日の夕食会後、改革案について「独仏は幅広い分野で合意している」と述べ、マクロン氏と共に改革をけん引する姿勢を示した。ただ、総選挙では極右政党の台頭を許し、求心力の低下が懸念されている。新たに連立に加わることが予想される自由民主党(FDP)はマクロン氏が掲げるユーロ圏予算などに反発しており、連立交渉が難航すればユーロ改革のスケジュール全体に影響が及ぶのは必至。トゥスク氏はこうした事情を踏まえ、「EUの結束を維持するため全力を尽くす。改革に向けて課題ごとに、一歩一歩前進する必要がある」と述べ、慎重に加盟国間の意見調整を進める意向を示した。