EU3機関が反ダンピング措置改正案で合意、WTO加盟国を一律の扱いに

欧州委員会は3日、欧州議会およびEU加盟国との間で反ダンピング(不当廉売)措置の強化に向けた改正案の内容で合意したと発表した。中国製の安価な鉄鋼製品などが大量に流入している現状に対応するため、不当な輸出補助などによって国内価格を大幅に下回る価格でEU市場に輸出された製品に対し、世界貿易機関(WTO)の法的義務に抵触することなく確実に対抗措置を講じることができるようにする。必要な手続きを経て、年内の新ルール導入が見込まれる。

EUでは輸出国の国内価格よりも低い価格による輸出(ダンピング輸出)が加盟国の国内産業に損害を与えていると欧州委が認定した場合、国内価格と輸出価格の差額(ダンピングマージン)の範囲内で割増関税を課す反ダンピング関税制度を導入している。ダンピングマージンは通常、域外の第三国からの輸出価格とその輸出国における国内価格または製造コストとの比較を基に算出されるが、非市場経済国では国家の介入によって価格やコストが人為的に低く抑えられるケースがあり、比較のベースにならないため、当該国以外の市場経済国の価格が算定の基礎として採用されている。

今回の規則改正の柱は、輸出国が市場経済国か非市場経済国かによって反ダンピング措置の扱いが変わる仕組みが廃止され、WTO加盟国はすべて同一の扱いとなる点。これは2001年にWTOに加盟した中国を15年間は非市場経済国として扱うとの規定が昨年12月に失効したにもかかわらず、EUと米国が市場経済国としての認定を見送ったことを受け、中国側が協定違反でWTOに提訴していることが背景にある。市場経済国に認定した場合、中国からの安価な輸入品に対して反ダンピング措置を発動することが困難になるため、EUでは中国を市場経済国として認定するか否かにかかわらず、協定違反を問われることなく適切に対抗措置を講じることができるよう、制度改正に向けた議論が進められていた。

具体的にはダンピングが疑われる場合、欧州委は国の政策と影響、国有企業の存在、国内企業を優遇する差別的措置、金融セクターの独立性の有無などの基準をもとに、国家の介入によって市場に重大な歪みが生じているかどうか判断する。

なお、WTO加盟国のうち非市場経済国に関しては、特例扱いの必要がないことが立証されるまで現状が維持される。また移行措置として、現在実施されている反ダンピング課税や調査中の事案に関しては、引き続き現行ルールが適用される。

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