自動車大手のフォルクスワーゲン(VW、ヴォルフスブルク)が中国とインド市場に低価格車を投入する方向で動いている。VWグループ関係者への取材をもとに『ハンデルスブラット』紙が18日に報じたもので、遅くとも2020年までに市場投入する考えだ。
印市場には5,000ユーロ程度のモデルを投入する。VWは同国をはじめとする新興市場向けの低価格車を現地同業タタ・モーターズと共同開発する方向で協議したが、8月になって協議が打ち切られたため、単独開発へと切り替えた。
同市場向け車両を開発するのはチェコ子会社のシュコダで、同子会社の既存モデルをベースに低価格車を開発。20年に印市場に投入する考えだ。車両は賃金が低い同国で生産する。現地サプライヤーからの部品調達が実現の前提となることから、すでに交渉を進めており、シュコダのベルンハルト・マイヤー社長は年内にも生産の正式決定を下す考えを表明した。同低価格モデルは将来的に東南アジア、アフリカに輸出することを念頭に置いており、年産台数で40万~50万台を視野に入れている。
中国ではVWブランド乗用車が現地提携先の第一汽車と共同で8,000~1万ユーロのSUVを2モデル生産する。ルノー傘下のダチアが欧州で展開するSUV「ダスター」を手本とし、19年から販売する考えだ。VWのブランド価値を低下させないため、新たなブランドで市場投入する。ロシアや南アフリカなど新興国のなかでは比較的経済が豊かな市場に輸出し、競合の長城汽車や韓国の現代自動車に対抗していく。
VWは新興市場攻略のカギとなる低価格車の開発を長年、試みているが成功していない。背景にはVWブランド乗用車の開発担当者が高品質の車両にこだわる結果、低スペックの枠内に収まらないという問題があるもようだ。インド向け車両の開発をシュコダに委ねたのはこうした事情があるためとみられる。ただ、インドでも中国でも消費者の要求水準は高まっていることから、快適性や安全性を軽視するとそっぽを向かれる恐れがあり、開発者には難しいさじ加減が求められている。