英のEU離脱条件で大筋合意、首脳会議で通商協議入り決定へ

欧州委員会のユンケル委員長と英国のメイ首相は8日、ブリュッセルで会談し、英国のEU離脱の条件で大筋合意したと発表した。これを受け、今月14、15両日に開くEU首脳会議で、英国を除くEU27カ国で離脱交渉の第2段階となる通商協議入りを正式決定する。

今年6月に始まった離脱交渉では、これまで◇英国が拠出を約束したEU予算の分担金など清算金の支払い◇英国の北アイルランドと国境を接する加盟国アイルランドとの国境管理問題◇在英EU市民とEU内に住む英国民の権利保護—-の3点を優先的に協議してきた。英側が早期の通商協議入りを求めているのに対し、EU側は離脱条件に関する第1段階の交渉で十分な進展がなければ、自由貿易協定(FTA)締結など、「将来の関係」をめぐる協議に入ることはできないとの立場を崩さず、英側に譲歩を迫っていた。ユンケル氏は共同記者会見で「3分野について十分な進展があった」と発言。メイ氏も「英国の利益にかなう内容だ」と交渉の成果を強調した。

今回の合意には◇EUへの分担金として、すでに編成された2020年までのEU予算の割り当てを英国が支払う◇アイルランドとの国境管理について、人やモノの流れを制限する障壁を新たに設けない◇EU市民や英国民が離脱後に相手側の領域に残留した場合でも、現在与えられている権利を維持できるほか、新たに家族を呼び寄せる場合も同様の権利を保障する――などが盛り込まれている。

ただ、アイルランドとの国境管理に関しては、具体的にどのような方法で人やモノの流れを管理するかなどに言及されておらず、問題を事実上先送りした格好だ。分担金についても計算方法などが定まっていない。また、第2段階の交渉で協議がスタートする離脱後の関係をめぐっては、英国が離脱後も2年程度は現状を維持できる「移行期間」や、EUとの貿易で有利な条件を維持するFTAの締結を求めているのに対し、EU側はこれまでと同等の条件は認められないとの立場で、双方の隔たりは大きい。実質的な交渉期限の18年秋までに調整がつかず、無秩序な離脱に陥る恐れもある。

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