EU常設軍事協力の枠組みが発足、英など除く25カ国が参加

EUは14日、ブリュッセルで開いた首脳会議で、加盟国が軍事分野で連携を深めるための「常設の軍事協力の枠組み(PESCO)」を発足させた。EU28カ国のうち、デンマーク、マルタ、離脱が決まっている英国を除く25カ国がPESCOへの参加を正式に表明した。参加国は軍事技術の共同開発など進め、防衛協力の深化を図る。

11月の外相・防衛相理事会でPESCOの創設を承認した際は、23カ国が共同文書に署名したが、最終的にアイルランドとポルトガルが創設メンバーに加わった。参加国はこれまで国ごとに行っていた装備の調達や開発に共同で取り組むほか、テロなどの緊急時に活動する部隊への参加、後方支援業務の共有化、軍事訓練への貢献などで合意した。また、EU予算や加盟国の拠出金で新たに創設する「欧州防衛基金」を念頭に、防衛予算の拡大も確約している。当面はベルギーが主導するドローンを使って魚雷を発見するシステムの開発など、17のプロジェクトを共同で進める。

PESCOは防衛面の連携に積極的な有志国による協力拡大を進めやすくするため、2009年に発効したEU基本条約(リスボン条約)に盛り込まれたが、EU28カ国のうち22カ国が加盟する北大西洋条約機構(NATO)と役割が重複するとして、英国が創設に反対したことで議論が停滞していた。しかし、英国のEU離脱決定やウクライナ情勢を巡るロシアとの関係悪化、欧州の防衛に消極的な米トランプ政権の誕生など、欧州の安全保障をめぐる情勢が不透明さを増すなか、ドイツとフランスの主導で急速に議論が加速。6月のEU首脳会議でPESCO創設を目指す方針を決めた後、欧州委を中心に具体策の検討を進め、先月の閣僚理で23カ国が創設への参加を表明していた。

EUのトゥスク大統領は首脳会議冒頭の演説で「PESCOがNATOを弱体化させる恐れがある、というのが長年にわたる創設反対派の主張だったが、実際はその逆だ。欧州の防衛力を高めることがNATOを強化することになる。したがってPESCOの創設はEUだけでなく、同盟国にとっても朗報であり、逆に敵対する勢力にとっては悪い知らせだ」と述べた。

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