採用募集で差別された場合、応募者は募集を行った企業などに損害賠償や慰謝料の支払いを請求できる。これは一般平等待遇法(AGG)15条1項、2項に明記されたルールである。では、募集対象を女性に絞った求人に応募した男性は性差別を受けたとして、そうした支払いを請求できるのであろうか。この問題をめぐる係争でケルン州労働裁判所が5月に判決(訴訟番号:7 Sa 913/16)を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判は自動車販売店の採用募集に応募した男性が同店を相手取って起こした。同店は2015年1月、「女性を権力へ」とのタイトルを冠した求人広告をホームページに掲載。文面は「販売チームを一段と強化するために自信に満ちてやる気のある、成功に飢えた女性販売員を募集しています」となっていた。
原告は男性が求人対象となっていないにも関わらず、3月2日付の電子メールで応募。19日付の返信メールで不採用の通知を受けた。
原告はこれがAGGで禁じられた不当な性差別に当たるとして、同法15条2項の規定に基づき、採用されていれば得たであろう月給3カ月分を慰謝料として支払うよう要求し提訴した。
1審のケルン労働裁判所は原告の訴えを棄却し、2審のケルン州労裁も同様の判断を示した。判決理由で同州労裁の裁判官は、原告が不利に取り扱われたことを認めながらも、職務の性質上、必要な場合は待遇に区別を設けることが認められるとするAGG第8条1項の規定を指摘。被告販売店の販売員がそれまで全員、男性だったことから、被告は女性顧客の利益を考慮し事業所委員会(Betriebsrat)と協議したうえで女性募集の採用広告を出したとして、原告男性の不採用は違法な差別に当たらないとの判断を示した。
最高裁の連邦労働裁判所(BAG)への上告は認めなかった。