独工業ガス大手リンデ(ミュンヘン)のアルド・ベローニ社長は8日の決算記者会見で、同社と米同業プラクスエアの合併計画に対し「当局が提示する承認条件はこれまで想定していたよりも高い」と発言した。独禁審査が難航していることを認めた格好。今年下半期に当局の承認をすべて確保できるとした従来の見解は堅持した。
両社は2017年6月、対等合併で最終合意した。合併後に誕生する新会社は売上高が約287億ドルに達し、仏エア・リキードを抜いて世界最大手となる。
これまでにロシアを含む10カ国で当局の承認を得たものの、主要市場のブラジル、米国、欧州連合(EU)で難航。特にEUの欧州委員会は厳しい姿勢を示しており、2月に本格調査を開始した。『ハンデルスブラット』紙によると、同委は健全な市場競争を維持するために、二大勢力となる新会社とエア・リキードに対抗できる企業を作り出したい考えで、リンデとプラクスエアが承認の条件として手放す事業について小規模な競合でなく中規模の競合に売却することを要求しているという。
リンデとプラクスエアは合併承認の条件として独禁当局から売上高で37億ユーロ以上、営業利益で11億ユーロ以上の事業放出を命じられた場合は合併を取り止めることでも合意している。このため、独禁当局の要求次第では破談となる可能性がある。
ベローニ社長はこれに絡んで、そうした大規模な事業放出を命じられても合併取り止めの権利が行使されるとは限らないと発言。厳しい条件を要求されても合併を実施する可能性があるとの見解を示した。
リンデの2017年12月期の営業利益は前期比2.8%増の42億1,300ユーロへと拡大した。事業規模が小さいエンジニアリング部門で12.2%増の2億2,000万ユーロと2ケタ台の伸びを確保。主力の工業ガス部門は1.4%増の42億6,800万ユーロだった。
売上高は171億1,300万ユーロで、1.0%増加。売上高営業利益率は前期の24.2%から24.6%へと上昇した。工業ガス部門の同利益率は0.2ポイント増の28.5%、エンジニアリング部門は同0.9ポイント増の9.2%だった。
税引き後利益は15.7%増えて15億3,600万ユーロとなった。米税制改革を受けて評価益2億5,000万ユーロを計上したことが大きい。
18年12月期は売上高で横ばい~4%増、営業利益で最大5%増を見込む。