中国通信機器メーカーを独情報機関が警戒

ドイツの情報機関が中国の通信機器・設備大手である中興通訊(ZTE)と華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)を警戒していることが、『フランクフルター・アルゲマイネ』紙の報道で分かった。米国と英国の当局はすでに、自国の通信事業者に対し2社の製品を採用しないよう呼びかけたり圧力をかけており、欧米では両社に対する風当たりが強まっている。

独連邦憲法擁護庁のハンスゲオルク・マーセン長官は同紙に、すべての中国企業は自国の情報機関との協働を義務づけられると明言した。ドイツで移動通信サービスを提供するドイツテレコム、ボーダフォン、テレフォニカの3社はZTE、ファーウェイの製品の少なくともどちらかを採用していることから、同庁は強い懸念を持っているもようだ。

3社のなかで両社との取引が特に多いのはドイツテレコムで、ファーウェイは同社最大のサプライヤーとなっている。ZTEとも契約を結ぶ。ドイツテレコムは同紙の問い合わせに、「ドイツの通信網ではZTE製部品を全く使っていない。欧州の通信網でもごくわずかだ」と回答したが、情報機関に対するZTEの協力疑惑が強まっていることから、「ZTEとコンタクトを取り」早急に解明する意向を表明した。テレフォニカはノキアとファーウェイ、ボーダフォンはノキア、エリクソン、ファーウェイの製品を採用している。

ZTEとファーウェイに対する警戒感は政界でも強く、与党キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)の連邦議会(下院)会派は、連邦ネットワーク庁(BNetzA)が近く行う第5世代(5G)移動通信網の入札では通信設備を利用したスパイ活動のリスクも考慮したうえで落札企業を決めることを要求している。5G通信網は自動運転やすべての機器がネットワークでつながるモノのインターネット(IoT)の基盤となるインフラであるためだ。CDUのトーマス・ヤルゾムベク議員(BNetzA諮問委員)は「オープンな競争は重要だが、中国の技術への過度な依存は絶対に回避しなければならない」と明言した。

英国家サイバーセキュリティーセンター(NCSC)はこのほど通信サービス事業者に宛てた文書のなかで、ZTEの設備・サービスを採用しないよう呼びかけた。同社は中国政府の統制下にある企業であり、同社製品・サービスの採用によって発生するリスクは「制御できない」と警告している。ファーウェイはすでに英通信事業者の主要なサプライヤーとなっていることから、さらにZTEも主要なサプライヤーになると英国のサイバーセキュリティが深刻な危険にさらされるとみている。

米国では両社製品・サービスの排除に向けた法案が議会に提出されている。

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