事業所委員との労使契約解除、手厚い条件は違法な優遇か

従業員の代表である事業所委員会(Betriebsrat)のメンバーはその活動がゆえに差別されることと優遇されることがともに禁じられている。これは事業所体制法(BetrVG)78条に記されたルールである。このルールに絡んだ係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が3月の判決(訴訟番号:7 AZR 590/16)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。

裁判は被告企業との間で労使契約解除の契約を結んだ事業所委員長が同解除契約の無効を訴えて起こしたもの。同委員長は同僚の女性社員に対しセクハラとストーキングを行ったことから、同社は即時解雇に向けて事業所委員会の承認を得ようとした(事業所委員は会社から不当に取り扱われるリスクが高いため解雇予告期間を設置した通常解雇が禁じられており、重大な理由がある場合にのみ認められる即時解雇を通してしか解雇できない)。事業所委が承認を拒んだことから、同社は2013年7月初旬、裁判所による代替承認を求めて提訴した。

それから間もない7月22日、同社は同事業所委員長との間で労使契約の解除契約(Aufhebungsvertrag)を法廷外で締結。同委員長に15年末まで有給で勤務を全面免除するとともに、退職一時金12万ユーロを支払うことなどを取り決めた。

原告は14年7月になって、前年に締結した解除契約は原告を不当に優遇するものであり、BetrVG78条に違反しているとして、同契約の無効確認を求める裁判を起こした。具体的には(1)計29カ月間の勤務免除期間に受給する給与が計14万4,000ユーロと多い(2)退職一時金の額も解雇保護法(KSchG)9条、10条で定められた水準(原告に仮に適用された場合は月給の15カ月分)を大幅に上回る(3)4万5,000ユーロ相当のキャンピングカーの支給を認められた――の3点が違法な優遇に当たると訴えた。

原告は一審と二審で共に敗訴。最終審のBAGでも判決は覆らなかった。判決理由でBAGの裁判官は、労働契約解除契約の内容は雇用主と被用者が自由に取り決めることができると指摘し、事業所委員会メンバーの優遇・差別を禁じたBetrVG78条の規定は適用されないとの判断を示した。

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